第15章 嵐の前の静けさ
「あ、は、いッ……」
上半身を僅かに倒した状態で恐る恐る立ち上がり、開いた教科書を持つ。
そろそろと口を開いた。
「公害病には四日市ぜんそくなど、が……あり……っ、街の名前や、症状、が……」
前かがみのまま、震え声を紡ぐ。
「読み取れるものが、代表的な、ものです……っ」
聖くんの目は泳ぎ、声は扇情的に震える。
指先までピクピクと痙攣している。
わたしは静かに、ローターの強さを中に上げた。
「症状はひッあ!」
聖くんの堪える表情が一気に崩れ、甲高い声で叫んだ。
上げた嬌声に、生徒たちの視線が集まる。
聖くんは息を整え、わたしの目を見つめる。
「す……すみま、せん……」
「大丈夫ですよ……でも一条くん、具合が悪いんじゃないですか?」
わたしは心配するフリをして、意地悪く問いかけた。
「んッ……!い、だ、大丈夫、です、症状、は……」