第15章 嵐の前の静けさ
「こんにちは、養護教諭の丸木戸紗都です。今日の保健の授業を担当させてもらいます、よろしくお願いしますね」
わたしが挨拶すると、教室中からどっと歓声が上がった。
みんな手を叩いて喜んでくれている。
わたしは困り笑いをし、生徒達の中から聖くんを目で探す。
見つけた聖くんはうっすらと顔を紅潮させ、こちらを見ていた。
その表情から緊張と興奮が窺える。
わたしは今朝のことを思い出す。
『なんだよ、先生が僕を呼び出すなんて……』
今日の授業開始前、わたしは聖くんを保健室に呼び出した。
椅子に座ったまま、聖くんに告げる。
『実は今日、聖くんのクラスの授業を持つことになったんです』
聖くんの眉がぴくと動き、目が僅かに光を持った。