第15章 嵐の前の静けさ
わたしは適当に相槌を打つ。
「ふーん……やっぱり聖くんもわたし達といる時と、他の生徒の子達といる時は違うんですね」
「学園長の息子だぞ?他の生徒の前では優秀でエリートな生徒のフリするしかないだろ。生徒会長なんてやるのもその得点稼ぎ」
聖くんは静かに学園内を見据える。
「学園長の息子って色眼鏡で見られるのも楽じゃない。他の奴らは羨ましい妬ましいって目で見てくるし、それを打破するために優しいいい子の聖会長だろ……」
聖くんは嫌悪感を含んだ言葉を漏らし、寂しそうな表情を浮かべる。
「……聖くん、自分が抱えてるものを誰かに気がついて欲しそうに見えますよ」
「そうかもな……」
聖くんはそこで言葉を短く切った。
「……別にいいけど……だって……」
徐々に声が小さく、相するように頬が赤らんでいく。
「そ、の……」
わたしはこてんと首を傾げた。
その瞬間、聖くんの顔は炎が出るんじゃないか、と思うほど真っ赤になった。
「なんでもない!」
荒っぽく言い、わたしから背を向けた。
「お、怒らないでくださいよっ」
聖くんはそのままズカズカと数歩踏み出し、
「……早く来いよ、先生ももう帰るんだろ」
不機嫌そうにこちらに言う。
わたしは苦笑して、聖くんの元に急ぐ。
「……でも、もしかしたらもうすぐ本当の聖くんに気がつく人がいるかもしれませんね」
そして、誰にも聞こえない程の声で独り言を呟いた。
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