第15章 嵐の前の静けさ
わたしは見慣れた雰囲気に切り替わった彼の元にこっそり近寄る。
「聖くんっ!」
背後から彼の名前を呼び、ぽんっと背中を叩いた。
「うわあッ!?」
聖くんは飛び上がり、目を丸くしてする。
ぱちぱちと瞬きし、わたしを見る。
「なんだ、紗都先生か……」
「な、なんだって……すみません、わたしで残念でした?」
「その逆」
聖くんはツンとした態度で言い切った。
わたしはその返答にきゅっと口を引き結ぶ。
熱くなった頬を手で軽く押さえた。
「……なんで紗都先生が照れてんの?」
「い、いえその、不意打ちだったからちょっと恥ずかしくて」
聖くんはムスッとした顔で、伏し目がちに呟く。
「僕の方が恥ずかしいだろ、あんなとこ見られて……」
どちらともなく、二人で並んで歩き出す。
「あんなとこって、今さっきのお友達といた時ですか?」
「……あいつらは生徒会の役員」
聖くんはお友達、という部分だけを否定し残りは否定も肯定もしない。
きっとイエスと見なしていいのだろう。