第14章 風雲急を告げる
「…………」
時雨先生は憮然とした顔で深深と椅子に座り込んでいる。
わたしは顔を覗き込むように、様子を伺う。
こわごわと口を開いた。
「……も、もう大丈夫ですか?」
時雨先生はわたしを無表情に見る。
「だから先に帰っていいって……あ、いや、やっぱ帰んな夜道に女一人は危ねぇ……」
こんな風にされてもなおわたしを気遣ってくれるのは、ほんとうに尊敬する。
だってどちらかと言うと、わたしに会った男の人の方が危ない目にあっている気がする……。
そんなことを思いながら、顔を伏せる。
時雨先生は苦虫を噛み潰したような顔で自分の腰をさする。
小さくボヤいた。
「やっぱり無理だな、まだいてぇ……動けねぇ……」
「……すみません」
わたしが頭を下げると、時雨先生は首を振る。
「謝んなよ、最高だった……ほんとお前堪んねぇ……」
そして満足そうに目を細める。
その姿をぼんやりと眺めながら、貞操帯はしばらく封印しようと思った。