第3章 口は災いの元
黙々と作業をしていると、視線を感じた。
永夢くんを見ると、目が合った。
どうやらずっとわたしの顔を見ていたらしい。
わたしは微笑み、永夢くんの方に身体を向けた。
「どうしましたか?」
「……オレ、あの時のせんせー見てるとほんとにゾクゾクしたんだよね」
永夢くんが腰を上げた。
「あんなの、初めてだったんだよ……」
わたしの心臓が跳ねた。
真っ直ぐな瞳に見つめられ、心臓がどくどくと音を立てる。
永夢くんは腰を折り、わたしに顔を押し付けるようにして、
「せんせー、オレを使って遊んでいいよ。思いっ切り、せんせーの好きなように……」
「失礼します」
「ビャアッ!」
わたしは奇声を発して飛び上がった。
永夢くんは特に動揺することなく、
「あ、かいちょー」
訝しげな顔つきの彼に笑って手を振った。
「せんせー、これがうちの生徒会長だよ。一条聖くん」
聖くんは渋々といった様子でわたしに目をやる。
サラサラとしたストレートの髪。
スラリと伸びた手足。
切れ長の目と端正な顔つきが与えるクールな雰囲気が印象的だ。