第14章 風雲急を告げる
仕事終わり、わたしと時雨先生以外誰もいない放課後の保健室。
わたしは時雨先生に抱き込められていた。
「丸木戸っ……」
熱い声で名前を呼ばれる。
わたしは椅子に座ったまま、時雨先生の頬を撫でる。
「何日目でしたっけ」
「……七日目……なあ丸木戸、そろそろ……」
わたしは口元に手を当てる。
確かに数日前から時雨先生の熱っぽい視線は感じていた。
ずっと焦らしていると、遂に時雨先生から誘われた。
時雨先生は不安そうに呟いた。
「……別に、お前がダメって言うなら、我慢する、けど……」
無愛想な時雨先生がこうして媚び売るような態度をするのが可愛らしい。
「そうですねー」
態とらしく思案する様子を見せ、笑った。
「じゃあこのままここで」
言い終わる前に時雨先生は立ち上がり、荒っぽくドアに鍵をかける。
わたしの元にずかずかと戻り、もどかしそうにわたしを見る。
「わー……やる気満々ですね」
時雨先生は苛立ったように自身の白衣の裾を握りしめる。
「当たり前だろ、一週間、も……」
わたしは口角を上げて微笑み、ポケットに手を突っ込む。
時雨先生は期待に満ちた目でわたしを見ている。
目の前に、小さな鍵を突き出した。
「射精出来なくて辛かったですか?」
「あ……っ……」
時雨先生の目が大きく開く。
視線が鍵に張り付けになり、ごくりと唾を呑んだ。