第12章 火に油を注ぐ
わたし達は顔を見合わせる。
「あ、アァん……もうやだぁ……」
「大丈夫だって……」
「ダメ……ッ、あぁ〜……っ」
知らない男女の嬌声に、わたし達は黙りこくる。
斗真先生の顔がみるみる赤くなっていく。
顔全体を真っ赤にし、立ち上がった。
「い、行きましょう丸木戸先生っ」
斗真先生の手を取った。
わたしは喉を小さく鳴らす。
「面白そうじゃないですか」
「えっ、そんなっ」
戸惑う斗真先生の手に指を絡める。
「でも出歯亀だなんて趣味が悪いですし」
わたしもベンチから腰を上げ、熱を込めて耳元に囁いた。
「わたし達も遊びましょうか……」
「あッ……」
斗真先生はふにゃふにゃと力を抜かした。
✱
「そんな、あ……ダメっすよ、こんなとこ……」
斗真先生は困惑した声を漏らす。
視線を上向きに逸らし、外を気にした様子を見せる。
「じょ……女子トイレ……なんて……」
個室に二人で入ると狭く、密閉感が強まる。
斗真先生は落ち着かないようで、身を縮ませている。
わたしは身を寄せる。
不安と緊張で固くなった斗真先生に、ささめいた。
「じゃああの人たちみたいに外でしますか」
にこつくと、斗真先生は恥じらったように唇を薄く噛み締めた。