第12章 火に油を注ぐ
研修会場に到着する。
辺りを見渡し、そわそわと落ち着かない背中を見つけた。
わたしは彼の元に歩み寄る。
にこっと微笑んで声をかけた。
「斗真先生」
斗真先生が振り向き、ぱあっと破顔する。
「あ、丸木戸先生っ!」
嬉しそうに表情を明るくした。
わたしはその様子に眉を八の字にする。
「早いですね、待たせちゃいました?」
「えッ!いや!全然!全っぜん待ってないっす!ほんとに!」
「そ、そうですか……じゃあ、行きましょう」
微笑みかけると、斗真先生は照れくさそうに頷いた。
✱
研修会を終え、二人で帰路を歩む。
「ためになりましたね」
「そっすね!丸木戸先生と保健体育の研修に来るなんて思いもよらなかったですよ。丸木戸先生って生徒思いっていうか、すごく熱心っすよね」
「一応保健の授業も持つかもしれないですし、勉強しておいて損は無いと思って」
わたしは軽くそう言い、斗真先生に笑った。
「それに、それは斗真先生もでしょう?」
斗真先生は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になり、ぼっと顔を赤くした。
気恥しそうに頭を搔く。
斗真先生も照れ臭さを隠すように笑った。
「は……ははッ、そ、そうっす、ね……」
「そうですよ」
微笑むと、斗真先生は何かを考え込むように静かに頷いた。
なんとはなしに二人の口数は減る。
わたしは二手に別れた道に差し掛かり、斗真先生に浅く頭を下げた。
「じゃあ、わたしこっちなので」
「え、あの丸木戸先生!」
「はい?」