第2章 窮鼠猫を噛む
だんだん頭が冷めてきた。
冷静になると、学び舎でとんでもないことをしてしまったのではないだろうか。
先に手を出してきたのは永夢くんだけど、わたしは今の自分の行為を正当防衛として声高に主張することはできない……。
というか、わたし、なんであんなことしちゃったんだろう。
大声で叫んで人を呼ぶなりすれば良かったのに。
百歩譲って膝蹴りまではいいとしても、そこから諭すのが正しい教師のはずだ。
……なんで、あんなに興奮しちゃったんだろう。
可愛い生徒を足蹴にして、わたしは……?
「ほらっ!今の授業は終わっちゃいましたけど、次の授業なら間に合いますよ!早く行きなさいっ!」
わたしは永夢くんの背中をグイグイと押す。
「わ、分かったよ」
永夢くんはわたしに後押しされながら帰り支度を済ませ、歩き出す。
かと思うとドアの前で立ち止まり、
「……せんせー、また来んね」
小さな声で呟いた。
「え……?」
わたしが聞き返そうとした時には、走り去る音に変わっていた。