第11章 鞍上人無く鞍下馬無し
わたしは着替えを終え、バスルームから出る。
緊張した面持ちでベッドに座っていたサヘルくんは飛び起きた。
早足にわたしの元に近寄り、目を輝かせる。
「すっごく素敵ですッ!ぼくは幸せ者ですっ、紗都せんせい綺麗です!」
「……はあ、どうも……」
わたしは俯く。
ピッタリと身体に吸い付くような、黒い皮のボンデージ。
わたしの全身はぴっちりとレザーに覆われている。
鏡で見ると、高級感があってセクシーで案外可愛いかも、と思ったが。
身体のラインがむき出しになって、突き出た部分が目立つ。
落ち着かなくてそわついていると、サヘルくんがスマートフォンを取り出した。
「写真撮ってもいいですかっ?」
「ダメに決まってるでしょ!」
わたしはサヘルくんを一蹴し、ベッドに座る。
片手でバラ鞭を手に取った。
よくイメージするような一本鞭とは違い、先端部から何本もの細い皮が伸びている。
持ち手をしっかりと握る。
軽く動かすと、先端から伸びる数条の皮がしなやかに揺れた。
わたしは皮を指先で揉み込む。
比較的柔らかい素材であることを確認し、サヘルくんの方を向く。
「こんなものまで買ったんですか?」
わたしは口端で笑う。
「はい……」
「これで叩いて欲しい、とかですか?」
サヘルくんは足先をもじもじと動かし、黙り込んでいる。