第11章 鞍上人無く鞍下馬無し
……貸スタジオやビジネスホテルという選択肢もあったけど。
サヘルくんをちらっと横目で見る。
目を爛々とさせ、頬を赤くしている。
期待しきったその様子からも興奮が窺える。
わたしが、これがただのお披露目だけでは済まないと踏んだのだ。
わたしは呟いた。
「サヘルくんも。貴方特待生でしょ?バレたらとんでもないですよ」
「そ、そうですよね……」
大きめのマスクを着けたサヘルくんは心配そうに頷く。
音がし、エレベーターが止まる。
わたしは苦笑いする。
「……まあ、死なば諸共ってことで」
扉がゆっくりと開いた。
目的の部屋に入ると、自動的に扉にロックがかかった。
わたしはようやく胸を撫で下ろした。
ふうぅ〜っと深い息を吐き出し、脱力する。
フラフラと広いベッドに歩み寄り腰を下ろす。
サヘルくんを見ると、キョロキョロと部屋を見渡している。
「……そんなに面白いですか?」
「は、はい、凄いですね……」
わたしはサングラスを外し、マスクに手をかける。
「マスクとったらどうですか?」
「あ、はい!」
サヘルくんはいそいそとマスクを取り、わたしの元にやって来る。
「紗都せんせいも貸してください、良かったらぼく置いておきます」
わたしは微笑み、自分の荷物を手渡した。
「ありがとうございます、じゃあお願いしますね」
「はいっ……」
サヘルくんはわたしから嬉しそうに受け取り、サイドテーブルに向かう。