第11章 鞍上人無く鞍下馬無し
サングラス越しに部屋が表示されたパネルを睨む。
適当に空き部屋をタッチし、部屋に向かう。
途中のエレベーターの中でわたしはマスクを軽くずり下げ、溜息をついた。
「……教え子とホテルって……わたしヤバいですって……」
教職としては勿論完璧にアウトだし、バレたら怖いことになりそうな知り合いが沢山いる。
わたしは眉間に深い皺を寄せ、もう一度溜息を吐く。
そんなわたしの隣で固まっているサヘルくん。
はあっと息を吐き、独り言ちた。
「……ぼ、ぼく、ラブホテルなんて初めてです……」
「おっきい声で言わないでくださいよ!」
わたしは薄暗いエレベーター内を睨むように、目を遠くする。
あれからわたしはどうしても保健室で着るのは嫌だ、とごね倒した。
やっぱり神聖な学び舎で、わたしにとって大切な保健室で白衣以外を着るのは嫌だった……どう考えてもわたしが言えた台詞じゃないけど。
サヘルくんはわたしの言葉を当たり前のように受け入れ、それでも着て欲しいと頼み込んだ。
サヘルくんの自室という提案を跳ね除け、わたしの家に連れ込むという案は無論却下し。
仕方なくこうして、冴舞学園から遠く離れたラブホテルに二人で来たのだ。