第10章 京の夢大阪の夢
おれの顔はぼっと熱くなる。
丸木戸が楽しそうに肩を震わせて笑う。
おれはむすっと表情を顰めた。
「大人をからかうなよ、丸木戸……」
「ごめんなさい、斗真先生」
おれは女性の相手が得意なほうじゃない。
それでも、普段は生徒相手にこんなに動揺したりしない。
丸木戸はおれにとってただの生徒じゃない。
……丸木戸とは、一線を越えてしまったのだ。
おれの脳裏にあの日のことが鮮やかに蘇った。
『……い、今なんて言いました?』
目の前の丸木戸の顔が見れない。
おれは頭を下げたまま、もう一度言う。
『丸木戸のことが好きだ……おれと付き合って欲しい』
生徒から告白をされたことはあっても、自分が生徒に告白をしたことはこれが生まれて初めてだ。
心臓が早鐘のように打ち、手のひらに汗が滲む。
『丸木戸の優しい所とか、可愛い所を、ずっと見ていたい』
『…………』