第10章 京の夢大阪の夢
苦笑しながら歩いていると、
「斗真先生!」
後ろから声をかけられた。
その声に、反射的に背筋がぞくりと震えた。
振り向くと、
「手伝いますよ、どこまでですか?」
保健委員の丸木戸が立っていた。
目を細め、柔らかい表情でこちらを見つめている。
丸木戸の言葉にデジャブを感じ、おれは首を傾げた。
「……どこかで聞いた事があるような……」
「え?」
「い、いや、何にもない!」
「変な先生」
丸木戸はふふふっと可笑しそうに微笑む。
おれの返事を待たずに、なつっこく隣に立つ。
おれよりもずっと細い手で、荷物を奪い取るようにして抱えた。
その姿が可愛らしくて、じっと見つめてしまう。
おれの視線に気がついた丸木戸はにこっと笑顔を向けた。
「体育倉庫までですか?」
「ああ……あんまり無理するなよ」
おれが咎めると、丸木戸はふふっと一笑に付した。
そのままおれを睨めつけ、ゆっくりと顔を傾けた。
「二人っきり、ですね」