第10章 京の夢大阪の夢
「……これで全部かな」
授業の後片付けを終えたおれは、額の汗を拭った。
グラウンドを見渡し、授業に使用した用具を抱える。
「よっ」
体育倉庫に向けて、ゆっくりと歩き出した。
授業終わりの女子生徒達の集団がおれに気が付いた。
こちらにひらひらと手を振る。
「坂見せんせー、じゃーね〜」
「ああ、また明日」
おれは笑顔で会釈し、荷物を持つ両腕に力を込める。
放課後になり、生徒たちがぞろぞろと校外に出てくる。
部活動だったり、帰宅だったり、あるいは単なるだべりだったり。
理由は様々だ。
たくさんの女子生徒達が、姦しく校庭に散らばっていく。
男子生徒は一人もいない。
そう、ここ、冴舞学園は由緒ある女子校だ。
歴史のある学園には優れた生徒たちが集まる。
勿論、教師陣も優秀な女性教師が揃い踏みだ。
おれは学舎を見上げ、ふうっと一息ついた。
数少ない男、体育教師であるおれは何となく肩身が狭かったりする。
同僚の保健医、時雨はそんなこと全く気にしてないんだろうけど……。