第7章 七夜
「ただいまー!施設長!お客さん!」
「え、ええっ?」
「す、すみません……」
「ね、ね、この笠なおして?お姉ちゃんのなの」
敷地内に大きく構える建物から多くの子供と出てきた施設長は私の姿を見て戸惑いながら笠を受け取る。ハッと思い出し、外套を脱いで急いで腰に巻き、赤雲を隠した。
「あらあら、今日はお祭りだから転んだ拍子に人混みに踏み抜かれてしまったのね?旅の人、今直しますからゆっくりしてってくださいな」
「ありがとうございます……」
柔和な笑みにほっと安心しながら、所在なさげに門近くに立っていると、先程の三人組がパタパタと近寄ってきた。よく周りを見れば年齢も身長もバラバラの子供達は物陰から様子を伺っている。
「なあ!俺たちと遊ぼう!そのためにここに連れてきたんだからな!」
「わわっ!」
露店で売られていたのであろう水鉄砲からぴゅっと水が吹き出した。それにやり返すように、手を組み合わせて含んだ空気を押し出すようにすれば、ちょうど水鉄砲と同じくらいの威力の水が吹き出た。
「うお!姉ちゃんやるな!」
物陰からわっと飛び出た子供達は一斉に水鉄砲を構えて集中攻撃を食らう。それを避けたり、たまに当たってみたりして一緒に遊んだ。腰に巻いていた外套もびしょびしょに濡れたころ、隅の椅子に座って子どもたちとお喋りをしていたら、最初のやんちゃそうな男の子は口を引き結んで目の前に立っていた。
「どうしたの?」
「姉ちゃん、オレに術を教えてくれませんか」
「………どうして?」
「オレ、強い忍になりたい!ここにいる皆を守れるような……誰にも負けない!」
「ゆっくんはねー、ここで一番のおにいさんなんだ!」
膝の上の女の子が微笑みながらそう言った。
鎖羅はここが孤児院だったことを思い出し、眉を下げる。