第7章 七夜
鎖羅は賑やかに飾り立てられた街並みを見渡しながらゆっくりと歩いていく。左肩に人がぶつかり、驚いて振り返るとトビが居なくなっていた。辺りを見渡してもその特徴的なオレンジの面はどこにも見当たらない。
「あ、あれっ、はぐれた…?」
道中で止まった鎖羅に次々と人の波がぶつかる。そのままよろけて裏路地への隙間に尻もちをついた。
「ッ……いたたた……」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
薄暗い通路の奥から三人の子供が歩み寄ってくる。やんちゃそうな男の子の背に大人しそうな女の子と男の子が隠れて覗き込んでくる。急いで立ち上がって砂をはたくと、足元には見事に踏み抜かれた笠が落ちていた。
「ええ〜?!嘘でしょ………」
「笠壊れちゃったの?」
「おい!知らない人には話しかけるなって」
「で、でも、困ってるひとは助けなきゃ」
女の子は背から出て鎖羅の笠を手に取ると、踏み抜かれた部分を小さい手でくるくる回しながら観察している。
「お姉ちゃん、これなら多分施設長が直せると思うよ」
「ええと……施設長?」
大人しそうな男の子は鎖羅の手を引いた。
「はい。遊んでくれる人は歓迎してますよ」
「えっ!ちょ、ちょっと!」
そのままグイグイと引っ張られ、路地へと吸い込まれていく。繁華街とは打って変わって人通りも少なく、どこかのどかな雰囲気が流れていた。しばらく歩いていくと、白木で建てられた大きな門が見えてきた。表札には孤児院と記されている。