第7章 七夜
「結構大変でした」
「傷凄かったッスもんね。兄弟なのになーんであんなに本気で戦えるんでしょうね?」
二人の間に沈黙が流れる。
それは双方、彼らを見てなにか思うことがあるのか、それとも先日の宿の事が胸に引っかかっているのか────お互いの瞳には丸い月が映し出されていた。
トビから静寂を破った。
鎖羅の背後に座ったまま擦り寄ると、そのまま腕を回して引き寄せる。バランスを崩した鎖羅はなされるがままにトビの胸元に背を預けた。
「トッ、トビさんっ」
「なんでイタチさんを助けたんですか?」
面で篭った声が耳元で響く。
手を引き剥がそうとしても、強い力で抱き締められて抜け出すことも出来ない。鎖羅は諦めて口を開いた。
「……秘密です。でも、私はあの2人のことを今でもずっと想っている人を、知っているから……」
悲しそうにまつ毛を震わせる鎖羅を、トビは抱き締めたままただ見つめていた。