• テキストサイズ

邯鄲の夢【NARUTO】

第7章 七夜




「サスケ……」

口が勝手に動き、誰かの名前を呼んだ。
反応したのは向かいの少年だった。

「なぜ、俺の名を……?」

「わ、わからない、でも、……あなたの名前を呼びたがってた。」

リュックを下ろして巻物を開く。サスケという名の少年は、その様子をただ目で追った。
クナイを取り出して親指の横をパックリと切る。イタチさんを生き返らせるためには多くの血が必要だ。

「何をするつもりだ?」

「イタチさんを生き返らせます。」

「ッ!!」

イタチさんの左胸に親指を突き立てた時、手首を掴まれる。顔を上げると、サスケは険しい顔で私を射抜いている。

「なぜだ、何の目的で……」

「イタチさんはッ!あなたの事を本当に大切に思っていた……!自分の全てを犠牲にしても、あなたの事を守りたいと……!!」

鎖羅の目からボロボロと涙が零れる。鎖羅は夢で全てを見ていた。また、移入した先の者が恐らくこの2人の母であることも分かっていた。
流れ込んだ記憶の中には、イタチが全てを背負い込み、犠牲になり、己を殺し、また、全てを殺す様─────

目を覆いたくなるほどの真実がそこにはあった。


謎の少女に突如兄を生き返らせると言われ、戸惑いを隠せないサスケは手を離した。

サスケは目を閉じる。
次々と流れるのは、今まで忘れていたと思い込んでいた兄との幸せな記憶。夕日が沈む中、怪我をした自分を背負って家へ帰る兄の背中の温もり。
既に兄は冷たくなっているのに、サスケの心から指先までじんわりとその温もりは広がっていった。

兄を殺してしまった後悔は拭いきれない。
しかし、この少女が言う通り本当に生き返らせることが出来るのなら────


「……頼むッ、兄さんを………生き返らせてくれ……ッッ!」


目を開いたサスケの瞳は美しい真紅の花が開いていた。


/ 389ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp