第7章 七夜
アジトと同じように、そこは岩で塞がれていた。岩を退けて中へ入ると、柱にかけられた松明が怪しげに光って曲線模様の床を照らしている。身体のあちこちに包帯を巻いた少年の横に、イタチさんは寝ていた。
「?なんですか、それ」
「睡眠薬です、これで夢を見ることが出来れば、イタチさんを生き返らせることができるはず……!」
壁に背を預け、サソリさんの説明を思い出し、一気に吸い込んだ。頭が仰け反り、視界がぐるりと上へ向いていくのを感じる。そのまま、意識は薄れて眠りへついた。
壁にもたれたまま倒れた鎖羅を抱き抱えて、脱いだ外套の上に寝かせる。夢を見れば生き返らせる、ということは例の禁術は覆す事象に関する夢を見ていなければ使えないのだろうか。まあ、その術の効果からすれば相応のハンデであろう。
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腹の底まで響いた雷鳴に肩を揺らす。
……揺れたのは本当に肩だっただろうか?
自分が自分とは言いきれない、なんとも曖昧な自我の状態に███は困惑する。
気づけば視界には、重苦しい雨雲と、崩壊しかけたコンクリートのコントラストが広がっていた。
真紅のオーラが揺れている。それをさらに見ようと注視すれば、それは紛れもなくうちはに伝わる、万華鏡写輪眼の開眼者のみが使用することの出来る“須佐能乎”であった。
そのオーラの先には、壁面に体を寄せて怯えているかのように縮こまっている青年。
そのどこか懐かしい、いや、見違えるように憎悪や殺意を纏った表情に、サスケだとすぐ気づくことは出来なかった。
オーラは段々と消え失せて、フラフラとサスケに歩み寄る男が見える。イタチだ。
███はサスケが苦し紛れにイタチに手裏剣を投げた様を見て、今すぐにでも駆け出して二人を抱きしめたい気持ちに駆られる。
……何故だろう?
不思議と、この二人にはそういった“母性”のようなものを感じる。
そして、イタチはついに力を失い、地面に倒れ、濁った目で空を見つめた。