第7章 七夜
轟々と森が黒い炎に包まれている。
歪んだ時空から現れた鎖羅とトビは、倒れている二人の青年に歩み寄る。
「イ、イタチさん!」
血まみれでボロボロの姿のイタチさんは美しい顔で目を閉じている。その横には顔立ちがよく似た黒髪の少年が逆向きで横たわっている。こちらも同じくらい傷付いていた。
トビさんがその少年の横に立つと、少年を先程の時空間忍術で吸い込んだ。吸い込みきった時、カクンと頭がもたげる。
「いや〜派手にやりましたねえ!わはは、見てこれ。穴空いてる」
中央に大きく空いた穴を覗き込んでは、時折バランスを崩して落ちそうになっている。
鎖羅はイタチの状態を確認する。手首に手を当てる。脈は取れない。心臓に耳を当てる。鼓動は聞こえない。
「しん、で」
どうしよう、彼らの戦いは夢に見ていない。つまり、この事実は禁術で覆せない。サソリさんの時みたいに生き返らせることは出来ない。
「センパイ?行きますよ?」
「イタチさんを、イタチさんを助けなきゃ」
「ど〜見ても助からないッスよぉ!早くアジト行って報告……」
振り向いて歩き出したトビはグン、と何かに引っ張られる。鎖羅が外套の裾を掴んでいた。
「お願いします、イタチさんも、連れてって」
「……連れてったとこでボクらにはなにも出来ることなんて無いッスよ」
「ッ……探すんです。無いなんてことはないんです!!」
掠れた少女の声が空に響いた。そうは言っても、あの禁術を使ってもらっては困る。イタチが生き返ったところで計画に狂いは出ないが……
仕方なく、イタチを吸い込んだ。
帰り道にも焦燥にかられる鎖羅を見て、トビは内心バカバカしいと思っていた。