第6章 六夜
「ちっくしょ、避けられた……」
気づいた頃には術を避けて傷を負うことなく立っていた。横にいるトビさんを向けば、ヘラヘラとした様子で所在無さげに足をブラつかせている。衝撃に備えて目をつむってしまったが、助けてくれたのかもしれない。
「シノ!頼んだよ!」
「……行け」
不快な羽音共に黒い雲かと見紛うほど密集した虫たちは私たちを囲った。いくら振り払ってもキリがない。咄嗟に水筒を取り出して水を撒き、一気に霧散する。
「ッ……!チャクラが消えました!」
対象物を見失った虫達は狼狽えながら空を彷徨い、次第にシノの元へと戻っていく。あたりは若干の湿っぽさに包まれた。
「カカシ先生!このままじゃラチがあかないってばよ!」
「ああ……。ナルト、キバ、ヤマト、予定通りのフォーメーションで行くぞ。」
「はい!」
時空が渦巻き、トビが現れると共に空気中の水分が凝結した。
「木遁!」
ヤマトが印を結ぶと、地面から木の触手のようなものが二人の首を締め上げる。息を詰まらせるが、鎖羅は腕に一気にチャクラを集中させた。
「水遁、豪水腕!」
首を挟んでいた木を勢いよく引き剥がした。咳き込みながら下を見れば、先程の少年は同じ術で向かってくる。大きく膨れ上がった腕を翳しながらぶつかった。手のひらが摩擦で焼ける痛みを感じる。