第6章 六夜
「ハァ……違いますよ、今からボクはセンパイを抱くんですよ」
「だ、抱く?それなら拘束しなくたって」
「いいから、少し黙っててください」
トビさんは呆れたようにため息を付くと、忍装束の裾から手を入れた。
お腹を手袋を付けた手が這う。背筋をかけ上る寒気に身をふるわせた。
「まままって待って待って」
「……はい」
「えっと、その、何がしたいかはわかりました、でもこういうのって好いている人同士がすることだと思います……」
「センパイはボクのことが好きじゃないんですか?」
だらりと両腕を下ろし、首をもたげて聞いてくる様は好きという感情よりも得体の知れなさから恐怖を感じる。身を捩って抜け出そうとすると、案外すんなりとそれを許した。
「ボクは鎖羅先輩のことが好きですよ」
「うっ……」
普段の軽率な口調とは打って変わって、テンポこそ軽いもののどこか重みを含んだ物言いになる。初めて向けられた異性からの好意に戸惑いを隠せず、動悸と共に顔が熱くなるのを感じる。