第6章 六夜
「素晴らしい……なんてことだ」
やはりあの力が必要だ。
サソリを生き返らせたあの力が……
欲しい。なんとしてでも欲しい。
対価として命が支払われる………?
知ったことか。所詮あの小娘の命など、この世界では本来存在してはならないのだ……
意識の混濁を感じ、すぐさま印を結ぶ。
身体の脈動と共に、霞んだ視界は晴れて現実へ引き戻される。
目を開くと、宿の部屋の中。
いつしか線香は全て灰となり、鎖羅は布団へ倒れていた。
「あらら、幻術返ししちゃったか」
ポン、と背中を叩くと鎖羅は突然目が覚めたように起き上がった。
「ッ、あ、あれ?!」
「おはようございます、線香火事になっちゃうんで、消しときましたよ」
「あ、ありがとう、ございます……」
裑を直しながら、鎖羅は不思議そうな顔で布団をまさぐる。どうやら覚えていないようだ。
「えっと、その……今何時ですか?」
「まだ子の刻ですよ ホラ、月も高いでしょう?」
「ああ……よかった、寝坊したのかと」
ほっとした表情で鎖羅は布団を被った。
いつも持ち歩いているらしいリュックは枕元に置いてある。いきなり探るのはトビとしても得策とは言えないだろう。
……どうにかして禁術を奪わなければ。