第6章 六夜
「待ってね、ここの扉の鍵ちょっと硬いんだ」
小さい手でうんしょ、と鍵を回す。
扉を開けると、文字通り天井まである本棚にぎっしりと本が詰められていた。天窓は開いているものの換気口がそこしか無ければ、中は書物の匂いで充満している。
「はェ〜……すごいッスね」
「でしょ!あ、なにか、よみたいもの、ある?」
「じゃあ……キミの一族の術について、知りたいな」
「いいよぅ!待ってて!」
とことこと走っていった先は、本棚のひとつ、同じ色の背表紙がずらりと並んでいる。幼き鎖羅は一番最後に詰まっている本を取り出して、トビに手渡した。
「これはね、わたしたち夢見一族がもってる、血継限界?について書いてあるの!まだ漢字が多くて全部は読めてないけど……」
パラパラと捲ると、最初の数ページは説明が書いてある。三つの能力について、恐らく与(ヨ)が、いまかかっている幻術なのだろう。
目次には一つだけ潰された、異様な章があった。末尾のページを見てみると、鎖状の模様が本の四方に伸びており、封印が施されている。
後ろを向くと、鎖羅は本探しに夢中になっていた。
いつか習った解の印を結ぶと、容易にその封印は解けた。
「……ッ?!」
記されていたのは禁術について。
だが、驚いたのはそこではない。
────禁術 『甦(ソ)』“無情ナルコノ世ノ定サヘモウチカヘス。ソレハ死カラ天ノオ怒リニ至ルマデ。術者ノ力量ニヨリケリ。但シ、対価トシテ願イ相応ノ命ガ支払ワレル。”