第6章 六夜
目を覚ますと、木ノ葉隠れとは違うような、どこか殺伐として現し世では無い空気感が漂っている地に一人、立っていた。
里内は若干湿っぽく、瑠璃色で装飾された白い漆喰の建物の壁を触れば、手袋を微かに濡らす。屋根はなく、全て綺麗に切りそろえられていた。
「ここは……?」
格好は奇しくも木の葉襲撃の時と同じものであった。仮面に手を当てると、凹凸はない。
街ゆく住民は皆おっとりとしていて、どこか透き通った印象を受ける。
坂を上るように歩いていく。市街地は以外にも栄えていて、時刻は昼頃なのか、主に飲食店が賑わいを見せていた。
「ッうぁ!」
ドンッ、と鈍い音がした。
視線を下にやると、幼い女児か尻もちをついて倒れている。
「……大丈夫ッすか」
「う、うん……。えと、ありがとう、ございます」
「名前は?」
手を掴んで抱き上げる。
戸惑っている表情はどこかで見たことがあった。
「ん……鎖羅」
「!……そうか、鎖羅か」
少し過去に戻りすぎたか。いや、問題ない。
己の過去を見せるように幻術をかけたが、これは一体どこの記憶なのだろうか。恐らく鎖羅自身が俺に幻術をかけた際にどこかで手違いが生じたのだろう。
「えっと……鎖羅、ちゃん?ボク、ご本を読みに来たんスけど、この里には図書館とかってありますか?」
「うん!鎖羅も今からそこ行くとこなの!えっとね、左に行くと森があるの。そこにあるよ!」
言われるがまま歩いていく。
着いた森は里の一角を覆っていて、言わば裏山のような作りをしている。
その奥深く、壁に沿うように古びた建物がそびえ立っていた。