第5章 五夜
──────────
「まだ止みませんね。
この時期にこの地域でこうも降るのはおかしいんですが……」
見渡せば重いのっぺりとした雨雲。三日前から変わらず雨が降り続けている。イタチは何も言わず空を見上げると、岩の庇から出てパシャリと水溜まりを踏み、雨に打たれた。
「お身体に障りますよ……」
そんな鬼鮫の忠告は聞こえていないのか、フリなのか。目に入る雨粒さえ厭わずに灰色の空を見上げたまま動かない。
「アナタが今何を考えているのか……それはわかりませんが……」
鬼鮫は鮫肌を肩から下ろす。
乾いた外套と、ずぶ濡れで重たい外套。
水に親和性がある自分だからこそ、火であるアナタが突然ふっ、と消えてしまいそうに思える。
「ここからだと、泣いてるように見えますよ……」