第5章 五夜
雨隠れの里を出て数時間。
暁は本拠地となるアジトとは別のアジトをフェイクとして各地に点在させている。
今回の任務はその中の一つ、風と火と雨の間に位置するアジトの管理へと向かっていた。
しかし、気候がそれぞれ正反対と言ってもいい三ヵ国に囲まれた地であるため天気は極めて不安定で、三回目のゲリラ豪雨に降られていた。
二人は道を外れて木の幹へ背を預ける。凌ぎきれてはいないが雨ざらしよりはマシだ。
「ひゃ〜……どうします、これ?」
トビはまだ乾ききっていない外套の袖で仮面を拭う。だいぶ蒸し暑そうだが口調はいつも通り軽いものだった。
鎖羅はそう聞かれると、頭の中で歩いてきた大雑把な距離を計算する。恐らく折り返し地点だ。このまま歩いてしまっても問題は無い。
「しばらく雨宿りして、雨が止んだら」
「あっ!鎖羅先輩!ボクここの近くに宿があるの知ってるんですよ〜!どーーせ管理も一日近くかかる事ですし、今日は諦めちゃいましょうよ〜!」
トビさんは水滴を散らしながらピョンピョンと跳ねると、道に戻ってとんでもない速さで走っていく。
「あっ、ちょっ」
外套の裾は泥が跳ねてすっかり汚れていた。それに湿気で汗もかいているので、どこかでスッキリしたいのは私も同じだ。二人が一泊する位の残金を確認して追いかけていく。