第5章 五夜
「ッ、ぐ、ぅ」
土を掴んで起き上がると、首元に痛みが走る。アジトへの帰還中、何者かの幻術にかかった。そこまでは覚えている……、だけどなんでここにいるのかは分からない。
外套の背中は引き摺られたような跡で汚れていた。
「……!」
「飛段さん!!」
破裂音が森に響いた。
木の葉の忍が拳に握りこんでいた鋸のような刃を持つ武器が飛ばされる。
「ッチィ、仲間か」
「アァー?!鎖羅なんでここに?!」
麓へ着地して飛段さんの前に立つ。腰に火と書かれた布を巻いている忍は飛ばされた武器を拾うと加えているタバコをふかす。
「私もわかりません!ッでも……まずはこの場をどうにかしないと……」
「おめーは手出しすんなよォ」
飛段が鎖羅の肩を押しのける。
鎌をおおきく振りながら木の葉の忍に飛びかかった。
紫煙が切れる度に金属音が響いた。鎖羅が1歩引くと、角都の触手が身体に巻きついた。
「角都さん?!」
「敵は1人じゃないようだ。気を抜くな、死ぬぞ」
しゅるしゅると解かれ、空中に放り投げられる。地上を確認すると三人の木の葉の忍が岩陰から走ってきた。
子の印を結ぼうとしている忍の手元に弾を打つ。
「すげぇ動体視力してやがるぜ……!」
「……飛段、早くしろ」
「だぁーーっ!!うるせェー!!」
ギャリギャリと火花が散る。鎌をアイアンナックルで受け流すが、横に逸れた時に頬を切られた。
「ゲハハァ!!」
飛段は後ろに飛んで身体を翻し、地面に紋様を描く。唇を舐めれば、身体に模様が浮かび上がった。
「灰積焼!」
カチン、と歯を鳴らす。吹きかけられた煙は一気に爆発した。