第4章 白昼夢
「当主様……」
「わたしの……わたしのせいだわ、これは呪いなのよ!!忌まわしい……」
居住区で泣き崩れる母の肩にウズメは手を置く。暗い廊下、ドアに背を預けて会話に耳を傾けていた。身体中には擦り傷、蹴りや突きを受ける腕にはアザが出来ている。治っていったとしてもまた新しいアザを作り、いつも紫に染まっていた。
「鎖羅様……」
「スメラギ、蔵書室に行かせて」
「本日の座学はもう規定量をオーバーしています」
道を塞ぐスメラギを押し退けて外へ駆け出す。夏の湿っぽい空気が頬を撫でた。
チャクラ紙が反応しなかった。
燃えることも切れることも濡れることも崩れることもシワが入ることも無かった。
手に握られるまっさらな紙はただ震えているだけだった。
スメラギは私にチャクラを練る方法から教えた。でも私にはそれが難しく、水面に立つことさえままならない。
蔵書室の本には、『チャクラとは身体エネルギーと精神エネルギーからなり、これを練り上げることで術が発動される』と書いてあった。私にはチャクラコントロールの才も、更には性質すらも無い。泣き崩れる母の姿を見て、私は落ちこぼれなのだと、そう思った。