第4章 白昼夢
「君、時間だよ」
「ええ、あなた」
手を差し伸べると氷砂糖のように透き通った細い指が添えられる。手を優しく引いてベッドから降りて二人肩を並べて部屋から出ると、スメラギとウズメがそれぞれ里長と当主の後ろにつく。
細やかなレースが控えめにあしらわれた巫女服は僅かに青みがかっていて、瑠璃色の唇をさらに映えさせた。とてもたおやかで見る人の目をたちまちに奪う。歩く度に薫る白檀の香りが高貴さを感じさせる。
「皆、お待ちですよ」
スメラギとウズメは白い幕を引く。そのままテラスへ歩みを進めていけば、里の民は大きな歓声を上げた。
「あら……」
腕の中の赤子は大きな音にびっくりしたのかふにゃ、と泣き声を漏らした。ぽんぽんと叩いてあやしても未だ泣き止まない。
「怖がっちゃって、この子ったら」
「泣き虫だなぁ!小さい頃の君にそっくりだ」
顔を見合わしてくだけたように笑い合う。これからの里を作る夫婦は、里始まって以来1番のおしどり夫婦だと里のみんなから愛されているのだ。