第3章 三夜
「あ?なんかお前白檀の匂いがすんなァ」
「母が好きだった匂いなんです」
里から帰って外套を脱いでソファに座る。白湯を啜っていたサソリさんは久しぶりの匂いの感覚を懐かしむようにひたすら鼻を利かせていた。
アジトにはいま、血を抜きやすくするために体を温めているサソリと明日の朝には二尾を狩りに行くために睡眠を取っている角都と飛段がいる。デイダラは外に出かけに行ったようだ。
尾獣のノルマ以外にも小間使いはあるものの、こういった休みの日にはできる限り里へ帰って“清掃”、勤行をしようと鎖羅は思った。
「んあ?なんだぁこの匂い」
「おはようございます、その……」
「飛段!ってかお前からだなこの匂いはよぉー?」
上裸の飛段さんは私に近寄って髪の匂いを嗅ぐ。チャラチャラと妙なシンボルの胸のペンダントが揺れる。
「勤行の時、この匂いの線香を焚いて時間を測るんです。これが全部灰になったら勤行は終わり……みたいな」
「勤行?ああ祈りのことか……ってかお前も宗教家なのか?話のわかるやつじゃねーか!」
肩を組まれ、ゲハゲハと笑いを上げながら引き寄せられる。爽やかではあるが若い雰囲気を与える匂いは香水だろうか、それとも同じようにお香か何かの匂いなのだろうか。