第3章 三夜
『██年、█月█日 丑の刻にこれを記す。』
拙くはあるが母の字だ。
『2つ目の能力開花に伴い、歴史書の記録を引き継いだ。古臭い書き方はやめて、これからは常用の言葉で記していこうと思う。』
これ以降は依然暗号化されている。
勤勉であった母は、これ以前の書を読むのにもさぞかし苦労したのであろう。
本殿を出て里の外へ歩いていく。
焦げて黒くなった幹は新緑を芽吹かせる気配すらない。一族の再興を望んでいいのかまだ分からない。だが犯罪者として記されている鎖羅の代の歴史書はいつか封印されてしまうだろう。
大海へ泳ぎ出した蛙は、いずれ浸透圧で死に至る。何かを望む暁には犠牲はつきものなのだ。それが平和であろうとも───────