第22章 夢現
「そう警戒することはない。ナルトとサスケ……我ら兄弟は彼の者達と魂を同じくする者だ。」
ざあ、と木々の葉が擦れる。
近くに川が流れているのだろうか、水の淨い香りが鼻をついた。湿気て僅かに柔らかい地面。沈んだ靴のつま先に並んだ指先が冷えて固くなった。
鎖羅は何かに突き動かされるように走り出す。
水を跳ねさせながら川を渡り、笹薮をかき分けると眼前に岩肌がそびえ立った。
はるか上の方には、岩肌に沿って古めかしい神社のような建物が鎖羅とハムラを見下ろしている。
「夢の子よ。私は大筒木ハムラ。そなたらに近しい言葉で言うならば、……キセイ。」
ハムラは音もなく鎖羅の前へ歩み寄る。
「大筒木一族分家の遠い子孫である夢見一族は私からの教えを固く守り、その身に宿した神樹のチャクラと禁術を子孫へ受け継ぎ続けた。いつか来るであろう我が一族の地球への帰還を夢見て、滾々と流れる川のごとく、ひとつなぎの血筋を……。」
大筒木、夢見、神樹、禁術。
これらの言葉が鎖羅の脳内を駆け巡る。
何かが思い出せそうだ。だが、その真実の尾を掴む寸前で指先は空を掻く。
頭を抱え、足元に視線を移した時、鎖羅は自分の服がいつの間にか丈の長い外套に変わっていることに気づいた。濡れたカラスの様な漆黒の生地に、赤い雲。
「……!わたし、……私、そうだ。幻術にかかったんだ。戦場にいたんだ。」
眼前に広がるのは、旧修練の谷。
暁のアジトで、私にとっては忘れられない、あの日の場所。
「夢の子よ。私とてこのような形で貴様の姿を見ることになるとは思わなかった。だが、確かに貴様の内に大筒木のチャクラを感じる。当主が同じ血族へと分けたそれが、“還った”のだろう。」
ハムラが後ろを振り返るように頭を振る。
鎖羅もそれにつられて前を向くと、当主、里長、スメラギ、ウズメ、4人が自分の体を中心にして、そして次第に彼らの体が灰になって崩れ落ちていった。