第21章 二十一朝
数回息を整え、どれぐらい経っただろうか。オビトは口を開いた。
「……オレは計画のためだけにお前に近づいた。」
鎖羅は目を見開き唇を噛んだ。
震えて言葉が出ない。握りしめた手の拳から指先まで、血液の熱が引いて一気に冷たくなっていく。
覚悟していなかったわけではなかったが、鎖羅はそれでもショックを隠しきれなかった。
もう終わりでいい、終わりにしたいと、切り立った崖のそばへと後ずさっていく。
オビトは伏せた目を上げて、鎖羅を真っ直ぐと射抜いた。
「最初は……そうだった。だが次第に、オレの全てを曝け出さなくとも、オレを受け入れてくれるお前に期待をするようになった。トビとして……だけではなく、うちはオビトとしても、愛してくれるんじゃないかって……。」
「………それで」
鎖羅は僅かに語尾を上げて返答を促す。
「開戦へ向けて、カブトから穢土転生のためにお前の死体を手に入れるよう言われた。幻術でもかければ、すぐにでも持っていけただろう。
だが、オレには出来なかったんだ。それどころか、殺さないでも利用する方法はいくらでもあるとカブトに打診して、お前とより長く時間を過ごせる道を選んだんだ。計画への近道よりもな」
「そんな、そんなこと……」
「それでも結果としてお前を捨てて血を利用したことは変わりやしない。お前との安寧を犠牲にしてでも、オレは戦争で勝ちが欲しかった。お前のことを殺さなかったのは……オレの甘さだ」
鎖羅の口元に笑みが浮かぶ。
ついに、彼は私が欲しかった1番の言葉を発することは無かった。あの日々は長く時間を過ごした故に至るべくしたもの。殺されなかったのも、ただの情。