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邯鄲の夢【NARUTO】

第21章 二十一朝



静かな沈黙が流れる。

オビトの返答はない。


鎖羅の頭の中ではぐるぐると様々な場面が渦巻いていた。
オビトが禁術を得る為にスメラギを術中にはめて里を燃やさせたこと。1人残った自分は暁に勧誘され、ツーマンセルとして行動したこと。木の葉を守り、暁崩壊後もトビを追って戦場へ飛び込んだこと。
そして、忘れられない恋慕と愛欲の日々。

こうして思えば自分の人生は、全てトビさんによって紡がれているようなものだった。
人生や命までも賭けてまで愛したかった人────

いくら裏切られても、利用されても、鎖羅にとって彼がそういった存在なのは、今でも変わらない事だった。

だが、その気持ちがオビトも一緒という訳では無いと実感する度に、鎖羅は世界から光が消えてしまったかのように心が暗闇に閉ざされる。



「……私は、っ、オビトさんを取り戻したくて、ずっとずっとそれだけしか考えないで、沢山の仲間を失ったとしてもこの戦争から降りることはしませんでした。
でも、オビトさんにとってこの戦争は私の元へ戻ってきてくれるためのものじゃない。のはらリン───あなたのかつての想い人を、あなたが取り戻すための戦争。」

鎖羅の瞳から涙が零れることはない。しかし、鎖羅が膨大に有したチャクラの激しい乱れはオビトの目に悲しみという形をもってハッキリと見えていた。

「……この戦争の末の平和がどんな形でも、オビトさんと共にいれるなら、私は今までどんなことをされてきたとしても構わないと思ってるんです。
でも……、オビトさんが目的のためだけに私に気持ちを向けていたとは思いたくないんです!私に希望を与えてくれたあの時間を、私は嘘だったとは思いたくないッ!」

鎖羅の叫びが、まるでオビトの肌全てをぞわりと撫で付けるように感じられた。その言葉ひとつひとつが血管を通って細胞へ染み渡り、心を突き刺してくるようだ。


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