第21章 二十一朝
オビトは背中越しに鎖羅の動揺を感じ取った。もしかしたら二人の関係は、言葉をかわさずとも互いの気持ちを通じ合えることができていたものだったかもしれない。
だが今となっては、よりあわせて丹念に紡がれた糸はその繋がりが解かれる寸前なのは、皮肉にも言わずして明白だった。
「……私たちも戻らなきゃ」
「待て。……少し話をしよう。」
とにかくこの場から逃げたがる鎖羅を、神威空間の特殊な時間の流れを理由に引き止める。
「……お前とはかなりの長い時間を過ごしてきたが、こうして本来の姿で、しっかりと話すのは初めてだな。」
鎖羅は写輪眼をおさめたオビトの目を見つめる。
オビトは幾分か澱んでしまったように見える鎖羅の目を見つめる。
戦時中なのにこの神威空間の静けさのせいか、お互いが僅かに柔和な表情をしている事に気づく。何処かちぐはぐな気持ちを抱えてみるが、それはすぐにオビトの言葉で打ち消された。
「どうしても、このまま別れてしまうのは嫌だった。」
それはまるでこの先が無いようなことば。
オビトが輪廻転生を発動しようとした時、そしてその後を追うと決めた時、鎖羅とオビト、2人はこの戦争で命を全うする覚悟をした。
死の恐怖さえも克服し、その時を抗うことなく待ち続ける者の表情は穏やかになる。
鎖羅はごくりと唾を飲み込む。
先程食い込ませたクナイの切っ先は喉に小さな切り傷を作っていた。ドクドクと全身に血が流れる。脈拍が早くなる。切り傷もそれに呼応し脈打っている。
しかし、めまいがする程の緊張とは裏腹に、
鎖羅はオビトがふたりだけの場で本音をこぼしてくれた事が少しだけ嬉しいと感じていた。