第20章 二十夜
「鎖羅さん、何を?」
鎖羅はサクラの隣に座り、サクラがナルトの体内に手を入れ心臓を握っているであろう場所の真上に手を当てた。
「私のもつチャクラ……生命力全てをナルトくんに注ぎます。ですが、尾獣の持つチャクラはとても多いので、その分だけは私では賄えません。」
「わかった。なら僕の中にある九尾の陰のチャクラをナルトに渡そう。」
「待って、鎖羅さんいま、生命力全部って……?!」
鎖羅は驚愕するサクラに微笑む。
そして遠くに佇んだオビトの背中を見やる。
「ミナトさん、始めましょう」
「ああ……」
ミナトはナルトへ九尾チャクラを渡すため、丹田に力を込めて九尾を閉じ込めている結界を放ち、そのままナルトへ繋がるように手のひらを介してチャクラを流した。
しかし、地中から影のように這ってきた黒ゼツがその全てを吸い込む。
「……え?」
「くっ……!」
かざしていた手に即座に螺旋丸を構えるが、黒ゼツは何かに引かれるように地中へと素早く戻ってしまった。
その瞬間、背後から大きな地響きがした。
「なに……なんなの?!」
その場にいた一同がもうもうと舞立つ土煙の中の存在に目をこらす。いや、目を凝らさずとも、毛の一本一本まで伝わる恐怖と威圧感でそれが誰であるのかを認識することが出来た。
「あんまり遅いからこちらから出向いてやったわ、黒ゼツ。いつまでオビトにへばりついてる?」
マダラの声が、世界の終焉を告げる空鳴りのように響いた。
その姿は先程までと違い、まるで六道状態のオビトのように白く変化している。しかし、オビトとは違い衣を纏い、より完全なる六道仙人の姿へと進化しているようだった。