第20章 二十夜
「何があった?!」
「ナルトの九尾からの伝言だ!四代目火影の中の九尾の半身をナルトへすぐに入れてやれと、そうしないとナルトは助からない!」
ミナトは眠り顔のように安らかな我が子を見下ろす。
九尾───すなわち尾獣が抜き取られた人柱力がどのような運命を辿るのか。それは痛いほど分かっていた。
「カカシ、奴を頼む」
「分かりました」
カカシは鎖羅の元へ向かい、そして隣に我愛羅が立つ。背後で父であるミナトが子であるナルトへ尾獣を渡そうとする姿に、鎖羅は何故か既視感を覚えた。
────いや、既視感じゃない。
「どうして……、どうしてこんな大切なことを忘れて」
──────────……
私は忍術との繋がり、あなたは生命チャクラ、スメラギは知恵、ウズメは力
鎖羅に自らが持つ全てを吹き込む……
でも、その代償に一族の血と力は全てキセイ様に返還される。そして、この忍界から存在を抹消される。
……──────────
「……鎖羅?」
お母さん、お父さん、スメラギ、ウズメ。
あの時自分に被っていた灰は、全て自分にとってとてもとても大切な人たちのかけらだった。いま、4人のチャクラが、生命力の全てが、鎖羅の中に宿っている。生きている。
そして、数百年、数千年と血で紡がれた夢見一族の全ての歴史が、鎖羅へと“還”った。
「……待って!」
鎖羅は外套を脱ぎ、背負っていた小さなバッグの中から母が書いていた頃の邯鄲の書を取り出した。
ナルトの中にいま、尾獣のチャクラはない。
そしてナルト自身のチャクラすらも消えかかっている今なら、同じ形ではない自分のチャクラも受け渡せるはず。そう、瀕死であった自分に母たちが命を託した術のように。