第20章 二十夜
「あなたに愛する資格がないんじゃない、私があなたに愛されるだけの人間じゃなかっただけ……。それでも私はトビさんのことをずっとずっと慕っています。どんな地獄でも、あなたと一緒なら……」
鈍く黒色に光る刃が鎖羅の首元にくい込んだ。
オビトは組んでいた印を解き、クナイを当てる鎖羅を止めようとする。
───しかし、突如としてオビトの体を漆黒の触手が侵食していった。
「ッく………、黒ゼツ!」
「オレハコノ仕事ノ為ニイタヨウナモノナンダ、悪カッタナオビト……次ハオレモ手伝ッテヤル」
解かれかけた印は再度結び直された。
そして、緊張の糸がぷつりと切れたようにその触手が体から引いていくと共に、オビトの息遣いは更に荒くなる。
引いていったその黒い触手はやがて人型となり、地面から生えでるようにしてミナトら4人を白い丸を張りつけたかのような目で注視した。
「何をした?!」
「マ……マダラが……、生き返って………しまっ、た……」
「オビト、コレデオ前ノ役目ハモウ終ワッタ。アトハソノママ死ヲ待ツガ良イ。」
力なく横たわるオビトの顔に影が落ちる。
指先が彼の眉間に触れる寸前、鎖羅は逆手に握っていたクナイをくるりと持ち替えて、瞳へ差し込まれそうになる手目掛けて一気に振りかざす。
「!」
鎖羅と同じくして手を伸ばしたミナト、クナイの切っ先を向けたカカシ達の動きを察知するや否や、黒ゼツは再度オビトの左半身を取り込んだ。
3人の足はピタリと止まる。耳元へ大きく切れ込んだ黒ゼツの口元が、予想通りの動きをした、と3人を嘲笑っているかのようだ。