第20章 二十夜
それでも、オビトの左手には鎖羅の温もりが残っていた。その感触がなんだか懐かしく感じる。
「……捨てられなかったんだ」
「え……」
「十尾に飲み込まれそうになった時、お前の顔が浮かんだ。それが乗っ取られそうになるのが嫌だったんだ。先生も、カカシも、リンも、鎖羅も、俺は捨てきれなかった。」
オビトは鎖羅に目を合わせることなく、ゆっくりと手を下ろす。
「最初は全て計画のためだった。だが次第に、お前が俺へ気持ちを向けてくるのが怖くなってきた。また失うんじゃないかって……。それでお前を捨てて、絶望へ突き落としたんだ。でも、お前がまさかここまで俺を追いかけてくるとは思っていなかった」
「……オビトさんが好きな子のために全忍界を敵に回したのと一緒です。私も、オビトさんの為なら命をかけたっていいんです」
鎖羅はオビトに歩み寄る。そして両腕を回して優しく抱き込んだ。
「オビトさんの心の穴は……夢じゃなくたって、月じゃなくたって、私が埋めてみせます」
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オビトの体から尾獣チャクラが引き抜かれた。
体を覆っていた白い鱗がひび割れて剥がれ落ちて、オビトは地面へ真っ逆さまに落ちていく。