第20章 二十夜
「オビトさん……好きな人が、いたんですね」
十尾の人柱力だったオビトの姿は、見上げた瞬間にトビの姿へと変わっていた。
「……またそうやって、ぜんぶ隠して」
「お前如きが俺の中に入ってくるな!リンにも及ばない未熟者が!」
「っ……!」
鎖羅の胸にトビの放った言葉が深く突き刺さる。
足がすくんで、一気にこの精神世界が恐怖に溢れるように感じた。でも、向き合わなきゃいけない。
「トビさんはこの世界を幻術に陥れて、幸せな世界を作ることが夢だった……。その夢のために、私や暁の皆を駒として利用して、尾獣を集め、……私から離れて、この戦争を起こした。それは全部、リンという女の子の死が全てなんですよね?」
「そうだ。あの日俺はもう一度リンがいる世界を創ると誓った。その為にお前らを利用したんだ。全て分かっているなら、なぜお前はまだ俺を諦めない?」
「愛しているからだと言っているでしょう!?」
涙に掠れた鎖羅の声が響いた。
「私は……私は、その偽りの姿の貴方でも、本当の姿の貴方でも、愛しているんです。あなたは誰でもなくなんかない、トビもうちはオビトも、どっちもあなただ……」
「今更その名前になんの意味がある?十尾と融合したこの姿はもう最早人ではない。六道仙人と意志、そして体を同じくしている。」
オビトの姿は人柱力へと変わる。
そして鎖羅へ背を向けた。
「違います。名前が問題なんじゃない。どんな姿でも、あなたはあなた自身です。
……私は確かに、のはらリンには及ぶことの出来ない未熟者です。そう言われてもいい。でも私は、愛するあなたを取り戻すためにここまで来れた。」
そのままオビトは鎖羅から離れていく。
「ッ……もう逃げないでください!現実からも……私の想いからも!!」
鎖羅はオビトを追いかけて左手を掴む。
しかし、オビトはそれを振り払ってしまう。