第20章 二十夜
「……!」
「なんだ、これ……九尾のガキか?」
鎖羅は追尾する根を水遁で切り落としながら、自分の胸に次々とナルトの記憶が入り込んでくるのを感じた。それはデイダラも、地上にいる皆も同じで、心の深い底で繋がりあっている感覚に包まれる。
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あの時……
やっぱり声かけときゃ良かったって、何度も思ったんだ………
だから………
オレは後悔したくねーんだ、
やっときゃ良かったって………
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鎖羅の目の前はあの日の雨に降られている。
頬を擦る砂、臓器まで響いた衝撃。解ける花。
水面を弾いて遠くなっていく背中を追いかけられなかった。
……あの時、追いかけられていれば、何か変わっていたのだろうか。
こうして、体だけでなく心でさえも離れることなんて無かったんじゃないか。
私たちの全部を、無かったことになんて……
「……デイダラさん、ありがとうございます。下へ降りましょう」
「言われなくても分かってるぜ、うん」
ひゅう、と風をきって鳥が落ちていく。
鎖羅はハシバミの隣へ降り立ち、デイダラと別れた。
「……あの根っこに何人かやられた」
ハシバミのその言葉に、養分にされた仲間たちの亡骸を見て奥歯を噛み締める。
「……仲間の死を、無駄になんてさせない」
ナルトに希望を与えられ、再奮起した連合軍は一斉に走り出し向かってくる根を切り伏せながら大樹を目指した。
以前よりも根に捕まる者が少ない。二代目火影、千手扉間の瞬身が先程のミナトの要領で危険が及んだ忍を逃がしている。