第20章 二十夜
「ッァアアアア!!!」
十尾の強大な意識にオビトの右腕は刈り取られていく。もう恐らく、“あっち”の自分は自己を保てていないだろう。
痛みと絶望。
自分が自分で無くなっていく、十尾は容赦すら見せずに左腕、半身と乗っ取っていった。
(先生……)
(カカシ……)
(リン……!)
頭部が真っ二つに割られる。オビトの意識に一瞬だけノイズが走った。その一瞬写った少女の笑顔。
それだけは失うことなんてできない。それだけはさせない。
雄叫びを上げながらオビトは意識を繋ぎ合わせていく。その時、オビトは十尾と自分が完全に融合し、コントロール下に置けたような手応えを感じた。
右手に錫杖を握り、切りつけた三又のクナイを受け止める。求道玉を置いたミナトの右腕が宙に浮いた。
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デイダラと鎖羅は前線を退き、連合と暁の元へと戻る。
忍達は皆ナルトたちの交戦を取り囲み、好機を狙っていた。
その時、地が生き物のように波打ち4つの花を携えた巨大な樹木が前線から生え出た。やがてその花はエネルギーを取り込みだし、見紛うことなく尾獣玉を形成していく。
逃げる間もなく連合は四赤陽陣よりも範囲の広い、六赤陽陣に取り囲まれた。
「!ペイン」
ゆっくりと宙へ浮き上がったペインを小南は追う。
両腕をかざし、双眸に尾獣玉を捉えた。
「そんな……無茶よ、いくら輪廻眼でも打ち消しきれないわ、それに貴方だって危ない……!」
「軌道さえ変えられれば良い、神羅天征だ。それに対策を打っているのは俺だけではないぞ」
小南は足元を見下ろすと、地上がまるで橙色の絨毯を引いたようになっているのに気づいた。そして、2人も。ナルトのチャクラは消えていなかったのだ。
「来る───────」
尾獣玉が放たれた。結界は大きく膨らみ、爆発の衝撃を結界の壁に反発させながら上へと登っていく。脈打った結界はまるで煙突のように爆風を吹き出した。