第20章 二十夜
ミナトは印を結び、2本の指を鎖羅の額に触れさせる。
「ッ……強い幻術だな」
鎖羅はゆっくりと目を開け、勢いよく起き上がった。
周辺を忙しなく見渡して困惑を漏らしながらミナトと目を合わせる。
「すまない、色々と説明が必要かもしれないがそれは後に回させていただく。君の名前は?」
「鎖羅です……」
「ミナトだ。オビトと一緒に時空間から出てきたってことは、君はオビトのなんらかなんだろうね。大丈夫、敵ではないことは分かってる」
「鎖羅!」
空気を叩くような羽音と共にデイダラはガマ吉の横に鳥をつけた。
そしてミナトは鎖羅をデイダラに任せ、オビトへ向き合う。
「時空間で何があった?」
「ずっと私は幻術にかけられていました。でも、あっちにはカカシさんが置き去りに……こちらでは何が?」
「お前とトビが出てきてから直ぐに十尾に異変があった。オイラには……トビが十尾を取り込んだように見える」
「十尾を……?!」
オビトへ降りかかった幾本もの明神門が粉々に砕け散る。そして直ぐに四赤陽陣は柔らかい風船のように弾け飛び、千手兄弟とヒルゼンが立ちはだかる。
鳥から身を乗り出した鎖羅の肩をデイダラが静止した。顔を見上げた鎖羅の表情は今までで見たことないほどの不安を滲ませ、今にも泣きそうだ。
「……どうして」
「勝算があって行くのか?……見てみろ」
既にオビトは先程までの場所にはいなかった。木遁分身の柱間と穢土転生体である扉間を一瞬にして塵と砕けさせ、大規模な連続爆発の爆風からひとつも傷を追わずに現れる。
「伝説として謳われる初代火影ですらあのザマだ……」
デイダラは鳥を急旋回させ、静かに飛び去っていく。