第20章 二十夜
柱間は鋭敏になったそのチャクラを取りこぼさなかった。彼に走るマダラのチャクラ、そしてマダラの塵芥が天に昇る様を確認する。
「六道の禁術……輪廻天生か……
少年たちよ!お前たちが近い、今すぐ十尾の上の者の術を止めてくれ!」
その呼びかけに真っ先にサスケとアオダが地を縫う。柱間と扉間の分身が走ってくることを知っていながら、マダラは術をやめない。この状況になっても分身しか寄越してこない柱間に僅かに苛立ちの表情をうかべる。
「う……うぐ……ッ」
生命エネルギーが急激に吸い取られ、オビトの頭髪が一気に白くなっていく。
サスケの放った須佐能乎の矢はチャクラ棒に退けられてしまう。しかし、術者本人目掛けてサスケは走り続ける。
ミナトは一人、いつかの日のことを思い浮かべていた。
憧れの人とライバル、その背中を追いかけるわけでもなく野次を飛ばすわけでもなく、静かに見つめる少年に、優しく問いかけたのだ。
自分と同じ夢を持った少年だった。
恵まれたとは言えない環境のせいにする訳でもなく、ずっとひたむきに頑張ってきた少年だった。
信じたくない。
いつからそんなに冷たい目を────
「オビト……お前……だったのか………」
「………先、生」
腹から肩口にかけて引き上げるように切り裂いた。オビトはゆっくりと地に伏し、ドクドクと傷口から血を流す。
「生きていたなら、火影になって欲しかった……どうして」
サスケは足を止め、破れたうちはの家紋を一瞥する。
「……あっけなかったな。後は術を成せなかったマダラと十尾を封印すればこの戦争も終わりだ」
「何をして終戦と決めつける、裏切り者の同胞よ」
掠れた声と共にオビトを原点として急激なチャクラの動きを感じ取った。ミナトは目を覚まさない鎖羅を抱えて後ろへ飛び退く。
オビトの姿は先程とは一変し、真っ白く変化していた。
「十尾の……人柱力だってばよ……!!」