第20章 二十夜
「知っているのさ……全て」
右腕の感触、眼前の景色
忘れることは無い破られた約束。
「お前が鎖羅を救うことでリンを助けた気になっていたとしても、リンは死んだのだ。守れなかったお前は偽物だ。そして死んだリンも、俺の中では死ぬべき人じゃなかった。」
オビトが後退していくと体からカカシの右手が引き抜かれる。ぽっかりと空いた風穴の内部は血が滴っているのみで、何もない。
「勘違いするなよ、俺は約束が守られなかったことに絶望したんじゃない。本当に絶望したのはこんな状況を作り出した忍界全て、この偽物の世界だ。」
「……ナルトが言っただろ、繋がりは切りたくないし、切られたくもないって……どうしてお前はこの世界でやっと出来た鎖羅との繋がりを断ち切ろうとする?かつてのお前なら、ナルトと同じことを言うハズだと……今も俺は」
「目を背けるなカカシ!俺の心にはもう何もありゃしない!痛みさえ感じない!
……償わなくていい、カカシ。俺は既にこの世界という舞台から降りている。繋がりなんて、とうの昔に断ち切れている。」
呆然とオビトの左胸の向こうを見るカカシの横に、甘い言葉を囁くリンと勇気に満ち溢れたオビトが現れた。それも、最も記憶に古い少年少女の姿。
「リンも、お前が求める俺もここに居る。好きなものを望むといい、そうすれば直ぐにお前の心の穴だって……」
「……ッ」
前頭葉がザワつく不快感に堪らず右手を振り、幻影を斬った。炎のように揺らめいて二人は呆気なく消える。