第20章 二十夜
鎖羅の頭がゆっくりと弧を描いた。
鈍い音と共に髪がふわりと舞う。
膝立ちのまま倒れた鎖羅の身体をカカシは仰向けに寝かせる。
……この空間に連れてこられた鎖羅は直ぐに幻術にかけられた。簡単には解術できない、深く深く術中に沈みこんでいるのはすぐ分かる。
「どうしてこんなことをする、オビト……!」
光を失った鎖羅の瞳にカカシの白銀の髪が映る。
「お前こそ、こんな戦力にもなりゃしない小娘を甲斐甲斐しく世話をしてどういうつもりだ、カカシ?」
カカシの右手が雷光に包まれる。
勢いよく突き出された手刀はオビトの鼻先でピタリと止まった。
「……お前もあいつと同じだ。心に迷いがある。戦争中に敵に情けをかけるとは、一体何がお前をそうさせる?」
「………」
脳裏に一瞬、消えて浮かんだのは少女の笑顔。
「まさか、鎖羅とリンを重ねているとでも……リンを守れなかった後悔を、あの娘を助けることで償っているとでも言うつもりか!?」
「な、何故……それを……!」
オビトは破顔しそうな程の笑いを喉でクツクツと抑えるようにしながら立ち上がる。
右目の写輪眼が輝きを増した。幻術にかかった体はずぶりとオビトの左胸に刺さっていく右手を動かそうとしない。