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邯鄲の夢【NARUTO】

第20章 二十夜



「トビさんの言う通り……私は、トビさんのことをあいしてます。それが偽りの愛故にだったとしても、好きになってしまったものは仕方がないんです」

「どこまでも利己的な愚か者だ。今度は優しさなど与えない。ここで殺してやる。」

鎖羅は振りかざされたクナイを持つオビトの手を掴んだ。

「……愛している人が道を外れようとしているのを正そうとするのは、間違っていることですか?」

「道を外れる……だと?」

オビトの脳裏にリンがちらつく。

そうだ。全てはリンのためだ。なにも間違ってなんかない。俺は正しい道を進んでいる。
──それなのに何故、どうして、俺は鎖羅の言葉に惑わされているんだ……!?


「トビさん………、オビトさん。あなたのしている事は間違ってます。私たち人間が生きるべき現実を差し置いて、束の間の気休めである夢で全てを手に入れようとするなんて、ただの逃げでしかない!」

「くだらん!お前も痛感しているはずだ鎖羅!俺から与えられた愛すらも偽物のこの世界で、一体何を信じるというのだ!計画は逃げなどではない、この偽物だらけの世界を終わらせ、全てが在る新たな世界を創るというものだ!
夢の世界に入ってしまえば、それが夢だとも永遠に気付かない、これを現実と言わずしてなんと言う?!」

オビトは鎖羅から立ち上がる。鎖羅も酸欠による頭痛でガンガンする頭を庇いながら、フラフラと立つ。

「死んだリンも、約束を守れなかったカカシも、あらゆる場面で俺の計画を乱すお前も、この忍界全てが偽物なんだ!」

「それでも……ッ、私がトビさんを愛しているこの気持ちは、偽物なんかじゃない!!私はこの世界で、あなたとずっと一緒にいたい!!」

「ッ!!……黙れ!!」

オビトが投げたクナイが鎖羅の腹に突き刺さる。そしてよろめいた隙にオビトは鎖羅の肩を押した。

体が奈落に投げ出されようとしたところで、鎖羅は崖の端を掴んだ。揺れる度にクナイが壁に押されてグリグリと傷を広げる。その痛みに手の力が抜けてしまいそうになる。

「……夢ではお前の姿を見ないことを願うさ」

オビトは鎖羅の指先を蹴り、神威空間の奥深くへと墜落させていった。


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